株式会社リスキーブランド(本社:東京都渋谷区、代表:田崎和照)は、15-74歳男女約5,000サンプルを対象にしたアンケート調査結果を用いて分析した、「消費者心理から分析した4つのMaaS*有望市場」を報告いたします。
*MaaS:”Mobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)”の略。出発地から目的地までの移動ニーズに対して最適な移動手段をシームレスに一つのアプリで提供するなど、移動を単なる手段としてではなく、利用者にとっての一元的なサービスとして捉える概念。(国土交通省資料より抜粋)
PDF: RB_MV_REPORT_190328.pdf
サマリー
MaaSにおけるサービスは、技術主導で語られることが少なくありません。この分析は消費者の心理面からMaaSの在り方を考えていくために行われました。MaaS事業を進めていく上での有望市場は、「シェアでクールに」、「少し贅沢に」、「ノマドのように」、「計画的に賢く」の4つ。MaaS市場では、それぞれのニーズに対応したサービスや技術の開発を進めていくことが求められます。
5つの生活者タイプと4つの有望市場
MaaSに関連する生活心理を統計的に分析した結果、日本人の消費者はA~Eの5つのマインドセットに分類できることが分かりました。うち4つのマインドセット(A~D)をMaasの有望市場と位置付け、それぞれのマインドセットについて分析と考察を進めました。
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- シェアでクールに(25%) シェアリングサービスが軸となる市場機会
- 少し贅沢に (22%) 快適な気分の提供が主軸となる市場機会
- ノマドのように (16%) 自由や解放感を軸とした市場機会
- 計画的に賢く (15%) 合理性と快適性のベストバランスが軸の市場機会
- 出不精なんです (22%) MaaS市場機会から除外(可処分所得、情報関与意識ともに最も低い。移動や旅行なども極めて消極的なことが除外の理由)
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A. シェアでクールに(構成比25%)
~シェアリングサービスが軸となる市場機会~
「カーシェア、ライドシェア、シェアサイクル、シェアホテルなど、様々なシェア(共同利用)サービスを積極的に活用する方だ」(そう思う計:62.6% / +45pt.)
*「 」の文章で示された設問の右にある( )内の値は、そのマインドセットに該当する回答者が答えた割合(左側)と全体平均との差異ポイント(右側)を示します。以下同様の形式です。
40代までの若い男性に多く、旅行やグルメが好きな人が多い。新しい情報やサステナビリティへの関心が高く、「時代を先取りできる」商品/サービスを求める。路面電車、飛行機、カーシェア、二輪車など様々な交通手段を利用する傾向が高いようだ。
様々な領域でのシェアリングサービスを牽引する市場。大切なことは「シェア」という行為そのものではなく、「シェア」は、時代を先取りするライフスタイルとして、あるいは自己表現の手段として認識されていることである。この認識がシェアリングサービスを牽引する原動力となっている。
サステナビリティ・ファースト
この市場ではシェアは節約などの実用性ではなく、サステナビリティとの関連が強い。ブランドイメージの訴求には実用性だけではなくサステナビリティの訴求が重要な鍵を握る。
・・・「商品を買う際、環境や差別、動物保護など、社会問題に取り組んでいる企業のものかどうかを確かめて買うようにしている」(そう思う計:51.1% / +24pt.)
シームレスなサービス
この市場では「シェア」だけを強調するのではなく、移動や旅行まで一気通貫で管理でき、極限まで手間を省いたサービスが重要な役割を果たす可能性が高い。
いちいち情報を入れたり、支払ったりの手間のないサブスクリプション方式やワンクリックで予約もキャンセルもできる簡便なアプリサービスが有効な手段かもしれない。
・・・「自分であれこれ手配するよりも、旅行計画から手配まですべてを代行してくれるサービスを利用する方だ」(そう思う計:60.4% / +35pt.)
テクノロジー
移動や旅行に伴うテクノロジーの活用は、極めて重要なサービスであることは言うまでもないだろう。
・・・「スマホアプリやAI搭載のサービスなどを積極的に活用するほうだ」(そう思う計:66.6% / +30pt.)
クールであること
この市場ではテクノロジーと同様にクールなサービスであることが重要となる。インターフェースのデザイン、ビジュアルのセンスは重要な役割を果たす。
・・・「デザインとかアートのセンスが高いと周りから評価されている」(そう思う計:49.0% / +23pt.)
B. 少し贅沢に(構成比22%)
~快適な気分の提供が主軸となる市場機会~
「多少高くても、快適に過ごせる交通手段を選ぶことが多い」(そう思う計:98.7% / +47pt.)
50代以上の男女(特に女性)に多く、健康やグルメへの関心が高い人が多い。最も可処分所得が高いグループであり、「豊かな気分」が得られる商品サービスを求める。タクシーや新幹線の利用頻度が高い傾向にある。
生活に余裕があるこの市場に向けては合理性ではなく、移動全体をパッケージにしたトータルでのサービスを提供することが鍵になる。
ストレスフリー
AIを活用しストレスのない移動をコーディネートするサービスはこの市場に訴求力があるだろう。
・・・「行き先・移動手段・宿泊施設、乗り換えや乗り継ぎなどアレコレ悩みたくない」(そう思う計:53.1% / +6pt.)
リスクフリー
移動や旅行に伴うリスクはこの市場にとっての致命傷となる。安全の担保・万が一のときの保険などを準備することが必要だろう。
・・・旅先でのトラブルや事故を未然に防いだり、万が一のときにはスムーズに対処してくれるサービスは積極的に利用したい(そう思う計:57.8% / +7pt.)
オーナーシップ
この市場ではシェアリングは魅力的ではない。自家用車を活用したり、移動全体をカスタマイズするなど、オーナーシップ欲求を刺激することが大切。
・・・車はレンタルやカーシェアではなく、保有したい(そう思う計:67.6% / +7pt.)
C. ノマドのように(構成比16%)
~自由や解放感を軸とした市場機会~
「あまり知られていない土地を旅するのが好きだ」(そう思う計:91.6% / +43pt.)
年齢層は幅広く、旅行(一人旅)や読書が好きな人が多い。内省的な価値観で自然に触れるのが好きで、自分自身を「ルールにしばられない」人と自認。「知的好奇心が満たされる」商品/サービスを求める。バスや電車/地下鉄などの公共交通機関の利用頻度が高い傾向。
この市場では、お仕着せのサービスやこれみよがしの最新のテクノロジーなどは意味をなさず、自分と向き合える内省的な体験や目的地での思いがけない出会いなどを提供するサービスが求められる。
偶然性(セレンディピティ)
この市場でのサービスは合理性や先進性ではなく、内省的な体験の提供方法が重要な役割を果たす。例えばサービスのビジョンを明確にし、同じような価値観をもった人たちとのコミュニケーションを促すことで魅力ある偶然性を提供できるかもしれない。
・・・「旅先では、名所や名物よりも、その土地の何気ない日常や文化に触れたい」(そう思う計:82.8% / +32pt.)
・・・「旅では、誰かに話しかけられたり話しかけたり、思いがけない人との出会いが楽しい」(そう思う計:78.6% / +31pt.)
・・・「行き当たりばったりの旅が好きだ」(そう思う計:75.6% / +37pt.)
・・・「人生は矛盾に満ちたものだし、その矛盾そのものを楽しむことが人生だと思う」(そう思う計:69.6% / +17pt.)
自然に触れる
自然に触れることができるサービスはこの市場では重要な意味を持つ。
・・・「自然に触れたり、自然の中にいると、自分を取り戻せる気分を味わえる」(そう思う計:67.9% / +17pt.)
自転車が鍵?
この市場では、今後自転車の利用を増やしたい人が多い。どこに行っても、便利に自転車が利用できるサービス、自転車で様々な活動ができるサービスなども有望だろう。
・・・「(今後、利用を増やしたい交通手段は・・・)自転車」(46.9% / +7pt.)
D. 計画的に賢く(構成比15%)
~合理性と快適性のベストバランスが軸の市場機会~
「特典やポイントを活用して、安くて贅沢な旅を組み立てるのが得意だ」(そう思う計:89.5% / +43pt.)
40代までの若い女性に多く、外食や旅行が好きで、計画的で物事を論理的に考えることが得意な人が多い。「快適な気分」が得られる商品/サービスを求める。バスや電車/地下鉄などの公共交通機関の利用頻度が高い傾向にある。
合理的な価格で快適な移動や旅を求めるのがこの市場のニーズ。低価格と快適のベストバランスだけではなく、プラスαの贅沢な体験を提供するサービスが求められる。
プライス・ファースト
割引やクーポンなど価格を訴求するサービスはこの市場にとっての必要条件となる。
・・・「金券ショップや割引切符などを駆使して、少しでも旅費を節約することが多い(そう思う計:78.0% / +31pt.)
目的地でワクワクを
この市場では、目的地での過ごし方、その土地ならではの体験が重要なポイント。お金を払う価値のあるワクワクする体験を提供するサービスが重要な役割を果たす。
・・・「交通機関や宿泊施設にはあまりお金をかけず、訪れた土地の食事や過ごし方にお金をかけるほうだ」(そう思う計:68.1% / +18pt.)
計画段階もワクワクを
旅の計画段階からワクワク感を体験させることもこの市場にとって重要なポイントとなる。事前に目に触れるSNSでの動画や評価コメントなど利用者同士の情報交換なども移動や旅そのものと同等に意味のある行為である。
・・・「計画段階で資料を取りそろえたり、ネットで調べたり、あれこれ悩んだりすることも、旅の楽しみの1つだ」(そう思う計:91.1% / +28pt.)
親しい人との絆
この市場のニーズの根底にあるのは、親しい人との絆を深めることにある。移動の場面でも、旅先でのコンテンツも、このニーズを最大化するサービスが求められる。
・・・「旅は、家族や友人・恋人など親しい人との絆を深めてくれると思う」(そう思う計:82.5% / +17pt.)
本リリース調査結果に関するお問い合わせ:
株式会社リスキーブランド 広報担当
Email: info@riskybrand.com
データソースについて
本分析では(株)リスキーブランドが実施するオリジナル調査「MINDVOICE®」のリサーチデータを使用しました。MINDVOICE®は、商品企画やコミュニケーションなど企業のマーケティング活動を支援することを目的とし、一般生活者(約4000-5,000サンプル/年)を対象に2008年から毎年実施している定量調査データです。
調査対象:全国、15-74歳の日本人男女(世帯年収300万円以上)*2017年までは15-64歳
調査手法:インターネット調査
有効回答:約4,000-5,000サンプル/年*2019年は4,972サンプル
*MINDVOICE®、MINDSET®は株式会社リスキーブランドの登録商標です。
株式会社リスキーブランドについて
株式会社リスキーブランドは、2001年創業のブランドコンサルティング・ファームです。顧客心理分析を強みに、高級車、ビューティ、高級ホテルでの実績をはじめ、戦略作りからブランディング・デザインまでのブランディングサービスを提供しています。
ホームページ : https://www.riskybrand.com