TOKYO FM 「TIME LINE(タイムライン)」は、『今日のニュースと考えるヒント』をキーワードに1日のニュースを紐解くラジオ番組。月曜日から木曜日の午後7時から約1時間放送されているTOKYO FM の人気番組の一つです。
2018年8月20日放送された同番組に、リスキーブランド代表の田崎和照がゲスト出演し、番組パーソナリティを務めるジャーナリスト・佐々木俊尚氏のナビゲートによって、日本の社会的価値観の動向について解説いたしました。以下、当日の「TIME LINE」で解説した内容の要点をかいつまんで紹介いたします。
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「冷笑主義」へと向かう日本人
社会的価値観の分析は、弊社実施のアンケート調査をもとにしている。15歳~64歳までの日本人の男女、毎年約4,000人を対象にした価値観・ライフスタイル・消費態度についての調査だ。今回の分析は、上記調査の2008年から2018年までの時系列調査を使った。41項目の価値観変数を主成分分析という統計手法を使って抽出された2つの軸上に、日本人の価値観の重心点を10年分プロットしたものだ。
分析の結果、この10年で、日本人は、言わば「シニシズム(冷笑主義)」へ向かっていることが分かった。
シニシズム(冷笑主義)とは?
ここで定義する「シニシズム(冷笑主義)」というのは、世の中のことを、「どうせ・・・」といったスタンスで批判的に冷笑し、あまり積極的に関与せず、自分の目先の楽しみを優先していこうっていう価値観とした。
批判をしても、そこからどう対処するかという態度に向かえばよい方法に向かうだろうが、批判して、社会との関わりを避けて、目先の楽しみの方向だけに関心が向かうとあまり良い方向には向かわないかもしれない。
世代による価値観が影響している?
シニシズムの特徴である、少し否定から入る価値観は、団塊ジュニア世代から生まれたと私たちは見ている。団塊ジュニア以降の世代(1971年以降に生まれた世代)は、大人になって昭和の好景気を経験していない世代。
その世代の人口は、2017年時点で全人口の49%に相当する約6,247万人。今では過半数を超えるはずだ。人口の過半数が、団塊ジュニア以降の世代になると、社会的価値観も変わると思う。
バブル世代やその上の団塊世代は、バブル世代とその上の団塊の世代は、社会に前向きに関与して、頑張れば報われた世代。そうではない経済環境や社会環境は、社会的価値観が、「シニシズム(冷笑主義)」へと向かうのも自然な流れだと思う。
例えば、『何かにつけ良く感動する方だ』と答えた人は、2008年では60%いたが、2018年で50%と大幅に落ち込んだ。こうした「感動の希薄化」も、「シニシズム(冷笑主義)」の現象の1つだろう。
何故、シニシズム(冷笑主義)が台頭してきたのか?
1つには、かつては頑張りさえすれば報われた中間層が、頑張っても報われないという経済・社会状況になってきたこと。
2つめは、かつては信頼できてきた大企業とか組織などの信用が薄れてきたこと。例えば、国際的な電機メーカーがメモリー事業やPC事業を売却したり、企業ごと外国の会社に買収されたり、また老舗の製造業が長年にわたってデータ改ざんしていたことなどは、大企業=社会は信頼に値しないという意識につながっている。
3つ目は、これは大きなインパクトだけど、別に社会に関与しなくても、結構幸せに生きていける社会が出来上がったことだと思う。コンビニに行けば何でも手に入るし、クリックすれば友達も、友達、結婚相手さえもも見つかる時代になった。本来は高価なブランド物も中古だけど安く手に入る。外出しなくても家の中でいつでも好きな映画も観れるし、ゲームも楽しめる。だいたい欲しいものはワンクリックで翌日に自宅に届く。つまり、積極的に社会に関与する必要もなくなったことだ。
企業には、ロジカルに共感を促すブランディングが求められる。
企業は、例えば大企業だからといって、かつてのような消費者との良好な信頼関係は、残念ながら存在しないという前提に立つべきだろう。
まず、企業倫理についてしっかりとした対応を行うことが前提。ESG/SDGiなどへの積極的な取り組みは必須だろう。
次に、ブランディングに場面では、例えば、好感度の高い女性の笑顔、赤ちゃんや愛らしい動物もイメージだけに依存した抽象的な表現手法は、これまでのように共感を得られることなくなるだろう。ただ、抽象的に共感を促すだけではなく、どういう心理的/物理的な便益を与えるのか、そしてその根拠や他社など、そうしたロジックをいかに分かりやすく提示するかが、これまで以上に大切になってくる。
そもそも企業は利益を追求するのは当たり前なんだから、それをオブラートで隠して消費者に寄り添う姿勢を見せるのではなく、企業の利益と、生活者の利益をどうがっちゃんこさせるか、それを『なるほどね!』って感じられる手順やノウハウが勝負になってくるだろう。
以上
参考:「生活者分析|この10年の社会的価値観の動向」(July 18, 2018)
PDF : RB_MV_REPORT_180718.pdf