(前編はこちらからご覧ください。)
4日目
この日は、50代以上に特化した初のマッチングアプリ「Lumen」の共同創業者兼CMOであるチャーリー・レスター氏によるミッションドリブンなブランディングについてのトークから始まりました。チャーリー氏は2018年のWomen of the Future、2019年のWomen in Tech 100に選ばれ、Lumenの業績が評価されてスティービー賞のアントレプレナーシップ賞を受賞しています。
チャーリー氏は、ミッションドリブンの重要性はもちろん、莫大な予算をかけた広告や伝統的なマーケティング手法に頼ることなくLumenのブランドをどのように構築したかについてもレクチャーしてくれました。
「セクシーサンタ」という挑発的なコンセプで制作されたこの広告は、瞬く間にイギリス中で話題となり、その後の大規模なPRにつながりました。
そのレクチャーの中から有益なヒントをいくつかご紹介します。
まず1つ目は、消費者は今、良い製品やサービスだけではなく、信念を伝える企業、つまりブランドの核となるミッションを持っている企業に惹かれているということです。
① 顧客を理解していることを示す。
② 顧客のことを気にかけていることを示す。
③ 商品やサービス以外で気にかけていること(つまり、ブランドと、ブランドのユーザーが共通して持っている価値観)について話す。
したがって、ブランドが提供するものの領域を超えた明確な視点を持つ必要があります。
もし、あなたが自分のミッションを定義するのに苦労しているのであれば、ブランドの「スーパーユーザー」(ブランドの既存のファン)に聞いてみましょう。そうすることで、ブランドの背後に存在するが、まだ明確になっていない価値観や信念を明らかにするために、協力関係を築くことができるはずです。
そして、それを伝えるために何百万ものお金をかける必要はなく、スーパーユーザーを信頼してメッセージを広めてもらうこともできるのです。
ルーメンは、アプリ内で最も人気のユーザーにスポットライトを当てることで、50歳以上のニューノーマルを可視化することを目的としています。
ミッション・ドリブンなブランドであることは、必ずしも持続可能性や社会的正義の実現といった大きな課題に取り組むことだけを意味するわけではありません。ルーメンのミッションは、マッチングという分野においてだけでなく、より広義な社会的文脈においても、他の世代に比べて存在感が乏しく、疎外感を感じている世代の声を拾い上げるということなのです。
最後に、人は経験を頼りに本物と偽物の判断を行なっているため、バッグワゴンに飛び乗らないように気をつけよう。例えば、ウェブサイトにblack lives matterのステッカーを貼るだけではいけない。特に創業者の場合は、自分の行動が会社のミッションと一致していることを確認しましょう。理想的には、創業者はブランドの一部を体現しているが、そのすべてを体現しているわけではなく、目に見える人物であるべきである(そうでなければ、ブランドから離れることが困難になってしまう)。
この日は、Born Socialのクリエイティブ・ディレクター、パディー・スミス氏によるソーシャルメディア・マスタークラスも行われました。
パディー氏のクラスでは、ソーシャルメディアは当初、ブランドのために設計されたのではなく、人のために設計されたメディアであり、そのメディアを使ってブランディングを行うことの本質的な課題について議論を行いました。ブランドは従来のマスメディアを中心とした一方通行のコミュニケーションモデルから脱却し、双方向のコミュニケーションスタイルを採用せざるを得なくなっていることが議論の中心となりました。
パディ氏は、文化的に関連性があり、本物だと感じられるソーシャルキャンペーンを作成するために、「スーパーユーザー」と協力することの重要性を示唆していたのも非常に興味深かった点です。また、Born SocialがTikTokからFacebookまで、各ソーシャルメディアのプラットフォームでキャンペーンを成功させるために使用しているフレームワークも紹介してくれました。
5日目
Future of Branding Weekは、Accept & Proceedのクリエイティブディレクター、マシュー・ジョーンズ氏によるブランドの目的についての示唆に富んだマスタークラスで幕を閉じました。
Accept & Proceedは、分析と美学を両立した思慮深い作品を制作することで知られていますが、「B Corp」の認定を受けていることから、利益の1%を1%For The Planetに寄付することまで、まさにその中核にパーパスが組み込まれています。
マシュー氏は、彼らのチームが「リビング・ビジネス・プラン」を使って、クライアントのために社内外でどのようにパーパスを作り、お金だけではなく、それ以上の素晴らしい作品を作るのかについて話してくれました。
アフタートーク
今回のFuture of Branding Week Liveには、世界中からアートディレクターやコピーライター、プロダクトデザイナー、デジタルストラテジストなど60名近くの参加者が集まりました。
当初の計画とは異なり、直接会ったり、授業後にビールを飲みながら意見交換はできませんでしたが、オンラインでの参加は主催者にとっても大きなチャレンジだったことでしょう。特に、このプログラムの醍醐味の一つである、講演者の会社のオフィスを訪問するように、彼らが実際どのように仕事をしているかを見ることができたということは、一般的なカンファレンスのプレゼンテーションでは得られない価値があることを考えると、このプログラムは非常に難しいものであったと思います。
直接会って話をすることができない場合、どのようにして物事を面白く保つことができるのでしょうか?ここでは、私が効果的だと感じたベストプラクティスをいくつか紹介します。
① 文化の構築を重視する
オンラインツールの利用ももちろん効果的でしたが、私は、本当の意味でFuture of Branding Week Liveのトーンを決定付けたのはファシリテーションだったように感じます。ファシリテーターのエカテリーナは、最初から和気あいあいとしたインフォーマルな雰囲気を醸し出し、熱意とポジティブな雰囲気を持っていました。 ブランディングの世界におけるスターたちの前にして萎縮してしまうこともあるかもしれませんが、皆が同じカジュアルな雰囲気の中に集まっているかのように感じることができ、自然と会話が弾んだのは、エカテリーナ氏がそのような場の雰囲気を作ったからであると思います。
② 自己紹介のための専用ツール
Future of Branding Week Liveでのレクチャーが始まる前、私たちは「コミュニティボード」で自己紹介をするように招待されました(ワークショップの運営に通常使用されるオンラインコラボレーションホワイトボードプラットフォームであるMiroを使用)。これにより、授業が始まる頃にはお互いのことを知っているような感覚になり、馴染み始めていたように思います。
③ カンバセーション・スターター
マスタークラスの後、私たちはZoomのブレイクアウトを使って小グループに分かれ、議論するトピックスを共有していました。これがきっかけとなり、より洞察に優れた議論を行うことができました。
④ 個人的な話をする
主催者は、自分の考えを話したり、パーソナルな話をしたりするよう、常に私たちを働きかけてくれました。全員の「人間的な側面」を見ることで、仲間意識が生まれ、業界や国境を越えて同じ船に乗っていることを実感することができました。
最後に
Future of Branding Week Liveは、結果的に「団結してインスピレーションを与える」という約束を果たしてくれました。
私は、このプログラムで一番良かったのは、世界のトップデザインエージェンシーのプロセスやツール、視点や文化、そして一般的なアドバイスだけでなく、舞台裏を知ることができたことだと思います。
それは、オフィスを実際に訪問することができなかったにもかかわらず、オンラインプラットフォームを有効活用し、参加者がインフォーマルな方法で登壇者に質問できるだけでなく、コミュニティチャットの中でお互いに学び合うことができる「常に学ぶ」というマインドセットが醸成されたことにより、可能になったのだと思います。
クリエイティブ業界はもの凄い速さで進化しており、誰もすべてを知ることはできませんが、異なるアプローチを受け入れ、最新の情報を得るための独自の方法を作ることが不可欠であり、フューチャー・ロンドン・アカデミーはまさにそれを行っています。クリエイティブ・コミュニティ間の境界をなくし、より多くのことを学び、達成するために。
今後、何回かの記事の中で、マスタークラスで行われたレクチャーの詳細をお伝えしていこうと思いますので、お楽しみに!