こんにちは。RISKYBRAND、デジタルストラテジストのロジャーです。
コロナで緊急事態宣言が繰り返され、落ち着かない中、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?
先日、一人の巨匠がお亡くなりになりました。
思えば今の自分があるのは彼のおかげだったので、今日は少し振り返ってみたいと思います。
もくじ
エリックさんの作品との出会い
今からさかのぼって30数年、香港の下町にある幼稚園で「はらぺこあおむし」という絵本に出会いました。記憶の限り、はじめての絵本でした。貪欲なあおむしが世界を食い尽くして蝶になっていく話はもちろん、色鮮やかな作風と分かりやすくも興味深い造形、そして絵本に実際の穴が空いていたという二次元を越えた遊び心に、幼いながらもとても惹かれました。
子どものころから「好きな色ってなに?」という問いに真っ向から答えられずにいます。ちょっとした悩みでもありますが、「この色が好き!」というよりも、色の組み合わせ、つまり配色というものが好きなのです。これを10歳と8歳の姪っ子に弁解するのが至難の業です。
信号機のあの三色、麻雀牌の模様、羽が広がった孔雀、虹、プライドフラッグ…色とりどりのものに心が奪われやすい自分にとって、エリックさんの絵本はまさにどストライクというわけです。
クリエーターとしての自分のルーツでもある「配色」に、エリックの作品は大いに影響を与えてくれたのではないかと思います。
エリック・カールの作風と技法
エリックさんの作風や技法は極めてシンプルでアナログ。いわゆるコラージュという作り方で、身のまわりの道具や素材で誰でも作れます。
薄手の紙に絵の具で様々な模様や、思いつくままテクスチャーを描いて、一種の「素材ライブラリー」をストックします。そこから作画したい絵によってライブラリーから模様が描かれた紙を取り出して、ハサミで形を整えてのりで貼り付けて完成です。
絵の具、絵筆、薄手の紙、ハサミ、のりと、使う道具がとてもシンプルで、作り方もとても簡単そうに見えますが、作画したいものによっていくらでも深掘りができ、いくらでもこだわっていけるところがこういった技法の良いところではないでしょうか。
そういえば数年前に一度、彼の作風をまねて絵を作ろうとしました。さすが巨匠の技だけあって、簡単そうに見えて実は大変時間がかかるものだったと身を持って知りました。アナログで作る大変さのあまり、途中でデジタルに逃げてイラストソフトで技法を再現して作画したのが今でも恥ずかしい思い出のひとつです。
エリック・カールのブランディングを考えてみる
エリックさん自身はどれほど意識していたか定かではないが、ブランディングの観点からすれば彼の技法と作風こそ彼のブランドではないでしょうか。
コラージュという技法はともかく、特有の作風の作り上げ方まで惜しみなく公開し、「さあ、みんなもどうぞ同じように作ってくれ」というスタンスも、もしかしたら彼のブランドかもしれません。
ほとんどの作家さんは自分の「ブランド」を守っている中、エリックさんは惜しみなく広げていたところに尊敬の念を覚えます。
画風と技法というブランドをオープンにすることでさらに広がって、みんながファンになる。それぞれの作品だけど、みんな “Made by Eric Carle” …
Twitterで#RememberingEricCarleのハッシュタグで検索してスクロールしていけば彼が世界に与えた影響が一目瞭然です。
ブランディングの世界に入ってまだ日が浅いのですが、日々携わっているブランディングの仕事でもこういった「オープンブランド」をもっと作れたらなと思うばかりです。
一方的にこちらから指示なり提案なりするよりも、エージェンシー×クライアント×コミュニティが並走して、みんなで作り上げていき、みんなで盛り上げるブランドこそ、これからの世の中で通用するブランディングではないでしょうか。
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「デジタル」という文字が肩書きにつくほど、すっかりデジタル人間になってしまった自分に、エリックさんは作品を通して、アナログの良さと大切さと、自分のルーツというものを思い出させてくれました。
チャンスがあれば色々な企業のオープンブランドの創造と進化にぜひ挑んでみたい、小さいながらも逞しいあおむしを空を美しく羽ばたく蝶に進化させてみたいと、数十年ぶりに絵本を読み返して思いました。
Thank you for giving us the wings to fly Eric, rest in peace.