ブランディングにおいて、書体(タイポグラフィ)は大事な要素の一つ。
リスキーブランドでは、ブランドのメッセージを適確に伝える書体を選んだり、時には書体を作ったり、世界で活躍するデザイナーとコラボしたりとこだわりをもって書体と向き合っています。
今回は、先日ポートランドで開催された「TypeCon」というタイポグラフィ界を牽引する国際カンファレンスに参加して感じた「タイポグラフィの3つの潮流」をご紹介します。
本題に入る前に改めて、タイポグラフィっていったいなんなのでしょう?
国語辞典によれば、【①活版印刷術。②デザインにおいて、活字の書体や、字配りなどの構成および表現】とあります。現代においては②の意味で使われることがほとんどですが、もちろんデザイナーだけに関係する話ではなく、私たちは日々の生活の中で、雑誌や建物の看板、時計の文字盤……と、至る所で様々なタイポグラフィに出合っています。
TypeCon: http://www.typecon.com
タイポグラフィの3つの潮流
1:手書き風レタリングが復活している
実は「手書き風」は決して新しい表現ではなく、PCソフトにおけるフォントが目覚ましく発達しても一定のニーズのあった手法です。しかし、近年また、個性を出したい、親近感を促したいなどの意図で、手書き風の文字が増加しているのです。今回のイベントでも、手書き風の文字だけを扱っているアーティストも多く存在していたのが印象的。モノやデジタルの情報にあふれている現代において、オーセンティックなものへ回顧するというニーズに応える手段なのかもしれません。しかし、これは単なる懐古的な話ではありません。現代の最先端の技術によって手書き風の文字をフォント化しているのですから、キーボードを打つとその文字が画面に現れます。そうすることで、制作物の多い企業やブランドでも採用することができているのです。リスキーブランドでも、手書き文字をフォント化してホテルのオリジナルフォントに採用した例があります。
2:タイポグラフィはコミュニケーションである
あるプレゼンは、「公共施設での文字の役割はなんですか?」という問いから始まりました。当然、情報を正しく伝えること、という答えが思い浮かびます。しかし、そこで強調されたのは、来訪者との感情的なつながりでした。アメリカの図書館や橋などを例に挙げながら、文字のサイズや色、配置はもちろんのこと、石に文字を刻むのか、鋼を切り出すのか、さらには使用されている素材までもが重要な要素であるとのこと。確かに、その場所の意味と役割を考えれば、素材は必然的にデザインの一部となり、タイポグラフィの構成要素であることがわかります。さらに、人には、その文字を見て抱く感情があるはずです。公共施設において、文字が社会的影響力を持ち、人と場所、ひいては人と人をつなげる可能性をもタイポグラフィは持っているのです。
3: Webのタイポグラフィがさらに進化する
3人のクリエイターで構成されるグラフィックデザインスタジオ〈Underware〉によるプレゼンテーション。太さや幅などを自由自在に変化させることを可能にし、フォントの概念を大きく変えた「Variable Font(バリアブルフォント)」。2016年の発表からソフトウェア会社での導入が急速に始まっていて、近い将来シームレスに文字の太さや大きさなどのアニメーションができる時代がくると思われます。この進化によってクリエイターはブランドの個性を表現するツールがさらに増え、今後のブランド体験のサイトやアプリケーションが変わってくるでしょう。
グローバル社会におけるタイポグラフィの役割は常に進化し、未知なる可能性を秘めています。リスキーブランドでも、タイポグラフィが、人と場所、人と人、人とものをつなげていくことを常に意識し、ブランディングの可能性を追求していきます。